成年後見人がいないと困る場面

高齢化の進展で注目されている成年後見制度ですが、実際にはどんな場面で成年後見人が必要となるのでしょうか。成年後見人がいなくて困る場面は、意外と身近にあるのです。

金融機関との取引

認知症の親の介護費用を賄うために金融機関に出向いたところ、親名義の定期預金を解約できなかったというトラブルは珍しいことではありません。定期預金の解約に限らず、振込や口座解約などの手続きが必要な場合で、認知症などにより本人の判断能力がなければ、金融機関から成年後見制度の利用を求められることがあります。

以前は家族が代わりに取引できた場合もありましたが、現在ではどの金融機関も本人確認が厳しくなり、たとえ夫婦や親子であっても他人名義の銀行口座からお金を引き出すことはできません。成年後見人として法定代理権が付与されていれば、本人の代理人として銀行も安心して取引に応じられるのです。

不動産の売却

認知症の親を有料老人ホームに入居させるため、空き家となる親名義の不動産を売却し、その資金を入居費用に充てたいというご相談が増えています。不動産の売買契約や登記申請に関しても、本人確認が厳しくなっており、子どもだからといって売買契約や登記手続きをすることはできません。法定後見制度を利用して売却する必要があります。

また、自宅が「居住用不動産」に該当する場合、不動産売買の手続きを行うためには家庭裁判所の許可が必要です(民法第859条の3)。家庭裁判所が本人の利益と売却の必要性を考慮した上で許可すれば、成年後見人によって売却することが可能になります。

遺産分割協議

遺産分割協議をしたくても、認知症の人がいて話し合いが進まないケースは非常に増えています。相続手続きを行うには、相続人全員が遺産分割に同意するのが前提です。

相続人の中に認知症などで判断能力を失った方が含まれる場合、そのままでは遺産分割協議ができません。当然ながら認知症の方も相続人としての権利を有しており、ご本人の利益を保護しながら手続きを進めていく必要があります。

一部の相続人を含めずになされた遺産分割協議は無効となり、法的に認められません。相続が発生してから成年後見人の申立てを行うと、さらに数ヶ月程度の時間を要することになります。必要に応じてお早めに成年後見制度をご利用いただければと思います。

当事務所では、各種申請・諸手続きなど成年後見制度に関するお悩みを解決へと導くお手伝いをいたします。大分県大分市を拠点に行政書士がサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。